世界で一番子供を叱る資格がない男

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もう自己嫌悪過ぎる。
けっしてやってはいけないと自戒していた行為を今日もやってしまった。

僕は弟とよく自転車で外出する。
今日もいろいろな所に買い物に行ったり、食事にしに行ったりしていたのだがどうも弟の自転車の漕ぐスピードが明らかに遅くなってきた。

疲れているのだろうなと思った僕は、併走して背中を押して加速してやった。

自転車に乗ったことのある人ならば解ると思うが、ある程度加速した後にギアを重くしてそのスピード維持すると、疲れにくくかつ速い。

なので背中を押した後、その背中に向かって「ほら!思いっきり漕いで」と声をかけた。

確かに思いっきり漕いだ。

1速で。

ちなみに弟は六段変速のマウンテンバイクに乗っていて、1速というのは相当な坂でしか使わないギア、平地で十分加速した後に使うギアではない。

最初から1速に入っていたなら理解できるが、わざわざ5速から1速に落したのがどうも理解できなかった。

あれだけ懇切丁寧に自転車の仕組みから、ギア比について詳しく解説し、実地訓練をし、理解させていたはずなのに、あれは上辺だけだったのだ。

本当は理解できていなかったのに、兄の説明を聞くのが面倒くさくなったから、流して聞いていたのだ。

勝手にそこまで飛躍して考えた僕は理不尽に激怒した。
そんな些細なことで怒るのはおかしいと今では思うけれども、その瞬間は兄と弟の信頼関係を踏み躙られたと感じたのだ。

「馬鹿!お兄ちゃんの言ったこと理解していなかったな!」

自分で言うのもなんだけれども僕は粘着質でしつこい性格だ。

もうバイト先の生意気な後輩が何度も同じ間違いをした後の鬱憤が堪りまくった叱責レベルの叱り方を小学生の弟にしてしまった。

しかもなんの脈絡もなく「馬鹿」という単語を投げ捨てるのは、子供の自信をなくさせ、積極性がなくし、さらに大人の叱責に怯えて失敗してしまうという負の螺旋構造に叩きこむ、大人として決っしてやってはいけない行為だ。

誰が「馬鹿」かと言えばこんな年齢になっても無知で当たり前の子供に同程度の知識を要求する僕であり、子供に理解できないように説明した過去の僕である。

本当に申し訳ないことをした。

馬鹿と詰られた直後の弟の歪んだ表情が忘れられない。

今日は片意地を張って謝れなかったけど、明日抱き締めて頬擦りしながら許しを乞おう。
あの子は優しいから許してくれるだろう。

しかし、その優しさに期待して子供を傷付けてしまった僕は最低だ。